当院でお薬は、 内科系のお薬は、身体の自然治癒力が十全に働く支えとなるように、 心療内科精神科のお薬は、こころが十全に働く支えとなるように、 配慮して処方しています。
日々診療では、「お薬はなるべく呑みたくない。」と言う方も居られますし、「漢方だけ。」とか、また逆に「お薬が絶対必要です。」と仰る方も居られます。 お薬の効能に関して、私は以下のような、「骨折の体験」で比喩的に考えています。
私は高校一年の時交通事故で左足を骨折しました。大学時代は右腕を骨折しました。 2回とも、手術して金具で骨を固定した後、ギブスを装着しました。 実は、恥ずかしい話ですが、私はあまり「良い患者」ではありませんでした。 高校のときは特にひどく、先生の言いつけが守れず、ギブスをつけたまま動き回ってしまいました。 ですから、左足の骨は今でも曲がったままになっています。
折れた骨と骨の断端が元通りにくっついたのは、骨の健常な細胞の新陳代謝で、不純なものを取り除き、新しくカルシウムを分泌して、新たに骨を形成したからです。 しかし、私の苦い体験が教えてくれるように、「決して金具やギブスが骨と骨を糊のようにつけてくれる訳ではないのですが、でも、ギブス固定や安静もぜひ必要。」という事です。
お薬の効能も、骨折の時の金具やギブス、安静と同じと考えています。 身体の病気の部分そのものを治すのは、身体全体に備わっている自然治癒力(身体という実に精妙なシステムのエントロピーを減らす方向に持ってゆく力)だと想います。 でも、お薬が、骨折の時の金具やギブスのように、自然治癒力が十全に働くのを支えてくれている。 その、双方が相まって、病気は治るのだと考えています。
私のクリニックは心療内科も標榜しています。ですから、(診れる範囲ではありますが)心療内科の疾患、或は精神科疾患、教育問題の方々も診療しています。 その経験上、上記のお薬の効能は、心療内科の疾患、或は精神科疾患、教育問題の方々の場合も同様ではないかと考えています。 当然、必要な場合使用する安定剤等のお薬でも、心そのものに作用して、心を治す訳ではありません。でも、心療内科、精神科のお薬を飲んだからといって、その方の人格が否定されるものでもなく、また、「心の問題だからお薬を飲んで治すのは間違いだ。」、という事にもならないと思います。 脳の状態を改善する事によって、骨折の金具やギブスのように、その方の心を支えてくれる、ということはあるように感じています。09.03.16.
※当院では、一般内科の患者さんの増加に伴い、両立が困難と判断して、2010年以降、心療内科の標榜はおろしました。22.11.05.
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